毎日忙しく仕事をしていると、目の前のことばかりに集中してしまいます。
その結果、目的を忘れて手段に埋没してしまうことになりかねません。
すると、もっとよいやり方があるのに、いやもっと別のやり方があるのに見失ってしまいます。
そんなときにこそ、改めて目的を考えることが大切です。
では、いったいどうすればよいのでしょうか?
(1) 分析的アプローチからデザインアプローチへ
そこで今後要求されるシステム思考は、分析的アプローチに基づくものではなく設計的(以下、デザインと言う)アプローチに基づくものということになります。
簡単に言うと、分析的アプローチというのは、既存の枠組みを是としてオペレーションを考える発想法のことです。
逆に、デザインアプローチは、枠組みそのものを考える発想法のことです。
それでは、もう少し詳しく説明させていただきます。
(2) システムを構成する三つの要素
その前に、ここで言う「システム」とは何か、ということを明らかにしておきたいと思います。
なぜなら、「システム」という言葉からイメージするものが、人それぞれ異なると真意が伝わらない可能性があるからです。
そこで、「システム」と呼べるために最低限必要な3つの要素を紹介しておきます。
それは、F:ファンクション(機能)、 I :インプット(入力されるもの)、O:アウトプット(出力されるもの)の3つです。
この3つの関係は、次のようになります。
つまり、インプット( I )が機能(F)によってアウトプット(O)に変換されるということです。
このとき、「アウトプット(O)は、機能(F)によって変換されたインプット( I )である」という関係が成り立っていないと、システムとして動かないことになります。
これは、「システム」が「システム」として動くかどうかを検証する方法として有効です。
要するに、「システム」と呼べるためには、F・ I ・Oの3つが有ればよいということです。
これで「システム」の構成要素についてはご理解いただけたと思います。
(3) 改善しかできない分析的アプローチ
そこで、分析的アプローチとデザインアプローチの違いの説明に移らせていただきます。
まず、分析的アプローチですが、これは先に I とOを決めてしまいます。
そのうえで、いかにして I をOに変換するのかというFを決めます。
そこで、現状のやり方を分析し、新しいやり方を模索します。
すると、Fは制約条件(人・物・金・情報・時間)に縛られてしまい、自ずと限定されたものとなってしまいます。
例えば、経理システムの構築において、貸借対照表をアウトプットしたいと考えます。
このときのインプットは財務データーとなります。
すると、 I とOが決まっているため、Fは「財務データーを貸借対照表に変換する」という、ごく当たり前のものになってしまうということです。
つまり、決まったFの範囲内でしか発想ができないということです。
どうしてもそのため、画期的なシステムは考えにくいことになります。
当然、 I やOが画期的なものであればFもその影響を受けます。
しかし、 I やOは現実的なものしか思い付きにくく、しかも、画期的なものを思い付いたとしても、今度はそれを達成するためのFが現実離れし過ぎてしまうきらいが出てきます。
(4) 発想を広げるデザインアプローチ
そこで、枠内発想から脱皮するためにも、デザインアプローチが必要になるわけです。
デザインアプローチでは、まずFを決めます。 このとき、まず「手がかりシステム」を選定し、その上でこれから作り上げたいシステムの機能を決定していきます。
例えば、先ほどの「貸借対照表作成システム」を例にとると、このシステムの機能は「財務データーを貸借対照表に変換する」というものでした。
そのうえで、この機能に対して「それは何のためか」また「何を目的としているのか」と疑問を投げかけながら、機能のカバーする範囲を広げていきます(このやり方を機能展開といいます。(詳細は「システムの実際」「システム設計」吉谷龍一著・日経文庫参照)
すると、一例として、「経営状況を把握し、次に打つべき手を考え出す」という機能に広がっていくことが予想されます。
そこで、この機能を満たす I とOを決めていくと、現時点のシステムからとんでもなくかけ離れることなく、新しいシステムを創り出していくことが可能になるわけです。