レコードからCDに代わったときにレコード針の会社は苦境に立たされました。
そしてまた、インターネットの発達によりダウンロードが主流になるとCDが売れなくなっていきました。
経営者は常に闘っている市場のゲームのルールが変わることを見越して経営を行っていく必要があります。
(1) ビジョンは機能によって変化する!
それは、「ビジョン」を静態的な表現にとどめないということです。
すなわち、ゴールを示す表現を行う前に、そのゴールは「企業がどのような役割や責任を担っているとそうなるのか」という「動態(機能)的な表現」を考える必要があるということです。
言い換えれば、一般的に言われている「ビジョン」というのは、経営システムのアウトプット(O)であり、アウトプットは経営システムの持つファンクション(F:機能)によって実現されるため、まずファンクションを明らかにする必要があるということです。
つまり、経営システムのアウトプットである「ビジョン」を「ファンクション」が決まる前に決めてしまうというのはそれ自体無理があるということです。
しかもその弊害については、これまでに述べた通りです。
(抜粋 : I やOは現実的なものしか思い付きにくく、しかも、画期的なものを思い付いたとしても、今度はそれを達成するためのFが現実離れし過ぎてしまうきらいが出てきます。)
故に、先に決めなければならないのは、経営システムのアウトプットである「ビジョン」という「目指すべき将来の姿(像)」ではなく、経営システムのファンクションである「目指すべき将来の機能(役割や責任)」ということになります。
するとこれは、経営システムの「現状の機能(役割や責任)」をベースにして、その機能を発展的に広げていくという「デザインアプローチ」の手法によって作成することが可能になります。
具体的には、これまでにご紹介した「機能展開」という手法を使います。 この手法を用いることによって、次のことが可能になります。
(2) 衰退産業を成長産業に変える!
マーケティングの世界で有名な論文に、セオドア・レビットという学者が書いた「マーケティング近視眼(邦訳)」というものがあります。
その中の一文に次のようなくだりがあります。
要約してご紹介させていただきます。
「何故、映画産業は衰退し、TV産業に取って代わられたのか。しかも、何故自ら、当時産声を上げたばかりのTV産業に参入しなかったのか。」
「それは、自らの事業を娯楽産業と捉えなかったからである。」
「また、馬の鞭を作る会社は、何故衰退し、鉄道事業に取って代わられたのか。」
「それは、自らの事業を輸送手段の動力源を作る事業と捉えなかったからである。」
「さらに、貨物輸送を行う鉄道会社は、何故、トラック会社に貨物を取られてしまったのか。」
「それは、自らの事業を運送事業と捉えなかったからである。」
(3) 処方箋は機能展開にあり!
そしてまた、レビット氏はこの論文の中で次のように述べています。
「これはあくまでも提言であり、処方箋ではない。」
これは、どういうことかというと、例えば、映画産業は娯楽産業と捉えればよかった、という結果を述べているに過ぎず、どうすればそのように考えることができたのかという手法を提示するものではない、ということです。
そこで、先に述べた「機能展開」という手法を用いれば、映画産業を娯楽産業と捉えるための処方箋となりうるということです。
すなわち、映画産業の機能を直接的に考えてみると、・・・
「大型スクリーンに映し出した動くフィルムを特定の場所で複数の人に見せる」
・・・というようなものになります。
これを「機能展開」という手法を使って発展的にその機能を広げていきます。
概略を申し上げれば・・・
「それは何のためか」
「その目的は何か」
「それによって何を目指そうとしているのか」
・・・というように疑問を投げかけながら、徐々に機能を広げていくわけです。