8.仕組みを作って人が動かす

大企業の研修担当者の中には、ミスをしないことを第一に考えている方もいます。

そのため、異常に受講者のアンケート内容を気にします。

よい研修は成果に結びつく研修です。

それはときには受講者の猛反発を食らうこともあります。

そのときにどういう態度をとるのか?

研修担当者の存在価値が問われます。

 

(1) 成果が出たのは結果論

ここではご紹介仕切れませんでしたが、物流システムの改善や管理職の方々への研修、また営業部門以外の方々への研修など他にも様々な取り組みが同時並行的になされ、全体的な成果へと結びついています。

また、この会社の研修事務局の方の研修に対する取り組み姿勢も尋常ではありません。

研修会場は研修効果の出やすいように場所や広さを考え、教室にはいつでも受講生がお茶を飲めるように紅茶やコーヒー、日本茶を用意し、朝は6時に起床して今日一日の打ち合わせを行い、夜は最後の受講生が課題を終わるまで一緒に残っています。

また、私ども研修会社の講師に対しても研修に集中できるように数々の配慮をしてくださるなどです。 この取り組み姿勢には頭が下がる思いです。

ところで、この会社の様々な取り組みが連動し成果に結びついたのは、結果論にすぎないのではないかとお考えの方もいらっしゃると思います。

確かにそのとおりです。

 

(2) システムの勝利

しかし、これを事前にきちんとシステムで捉えておくことができたなら、もっと効果が上がったということです。

そこで最後に、この会社の取り組みをシステムで捉えるとどうなるのかということをまとめさせていただきます。

まず最初に、F(ファンクション:機能)ですが、以前は「小売店との人間関係を強化しながら、商品の供給を行う」というものだったと思われます。

ですから、営業スタイルが、集金であり、商品発送であり、クレーム処理であり、また接待であったわけです。

さらに、当然のことながら、それに付随して、営業支援システムも物流システムもこの機能に合わせて造られていたことになります。

もっというならば、上司の部下に対する指導もこの機能にのっとっていたといえます。

ということは、このシステム上で必要とされる人材像も自ずと明確になってきます。

しかし、現在はこれが「小売店のエンドユーザーへの商品供給力の向上を通じて、小売店そのものの売り上げ・利益を向上させる」というものに変わったと考えられます。

ですから、全社的キャンペーンとして「小売店の活性化のための提案活動」が取り上げられたわけです。

しかも普段の営業活動さえ、小売店の売り上げや利益が向上するような指導がそのメインとなってきているのです。

するとそれに付随して、営業支援システムや物流システムにも変化が起きてくることになります。

また、営業マンに必要とされる能力が、お客様との人間関係を強化する接待能力ではなく、小売店の経営アドバイスができる能力へとこれも変化してきました。

そのため、販売士1級の資格取得などが必要になってきたわけです。

すなわち、このシステム上で必要とされる人材像は、以前のものとは大きく変わったといえます。

そこで、これらの動きに連動する形で、これまでご採用いただいていた私どもの「商談力強化研修」が効果を発揮していったといえます。

ところがもし、インストラクター制度も販売士1級の資格取得もなく、私どもの「商談力強化研修」のみで前記の機能を全うしようとすると 、所期の効果は得られなかったと推測できます。

なぜなら、前記の機能を全うしようとすれば、営業マンのバックボーンとなる知識が必要であり、しかも営業現場での上司や先輩、同僚の協力が不可欠だからです。

しかし、インストラクター制度や販売士1級の資格取得、また営業支援システム、さらには物流システムなど前記の機能を全うするための全社的なトレンドが有機的に影響しあい、システムとして連動したため所期の効果につながったわけです。

まさに、システムの勝利といっても過言ではないでしょう。

 

(3) 人の想いが組織を動かす

但し、ここでご注意いただきたいのは、このシステムを動かしているのは「人」だということです。

この「人」の感情を無視して、仕組みだけ整えたとしても決して成功はしません。

そこで思い出して下さい。

この会社の研修担当課長の「想い」と「動き方」を。

「営業マンに営業の誇りを持たせたい。営業の醍醐味を味わわせたい。営業をやっていて良かったといってもらいたい。

そのためには命も惜しまない。」この想いを胸に、研修採用当初、全受講生一人一人と対話を行ったという事実です。

しかも、実際に2度入院されています。

これなくして、この会社のシステムは動かなかったでしょう。

まさに研修担当課長の「想い」そのものが、このシステムを動かす原動力であったといえます。

さて、私はこの研修担当課長の「想い」をどれだけ汲み取っていたでしょうか。

今、思い出すと恥ずかしい限りです。

いまさらながら痛感しています。

研修会社の講師という仕事の責任の重さと怖さを。

ところで、次回から、営業マンが得意先である卸売店や小売店の活性化(経営指導や課題解決)を図っていくときに、どのように考えていけば良いのかということをシステムで捉えてみたいと思います。

 

 

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