出る杭は打たれる。
組織が大きくなればなるほど安定化を人は求めるものです。
そんな状況で新しいことをやろうとすれば、反対派の抵抗は陰に陽にすさまじいものがあります。
それを一つひとつ乗り越えていくには?
では、いったいどうすればそれはできるのでしょうか?
(1) 効果を上げたインストラクター制度
こんな泥臭い営業活動をやりながら30年近く経ったころ、当時の専務からお呼びがかかり、営業研修の責任者に任命されたわけです。
当然、始めは断りました。
私みたいに現場しか知らない人間に、研修などの責任者になれるわけなどないからです。
しかし、「だからこそ、君にやってもらいたい。なんとか営業の第一線を活性化したい。一緒に頑張ろう。」という専務の言葉にほだされ引き受けることにしました。
やるからには、本気です。
営業の第一線で泥にまみれながら、この会社を支えている多くの仲間のためにも、営業の誇りを感じさせたい。
「あー、営業をやっていてよかった。」と思ってもらいたい。
そのためには、命も惜しまないぐらいの覚悟でした。
そうは言っても、私どもの会社では、ほとんど研修らしいものは何もやっていなかったのです。
全くの一からのスタートでした。 いったい何から手を付ければ良いのか、暗中模索といった状況です。
ともかく考えました。
全国に800人程いる営業マンにどんな研修を実施すれば良いのか。 全員に受講させるのか。
それとも、代表者だけか。 考えて考えて考え抜きました。
そんなとき、フッと思い付いたのは、研修をやるからには、現場に定着させなければならない。
そのためには、受講生が現場に帰って指導者になるのが一番だということです。
「教えられた人間が、教える人間になる。
つまり、教えようと思えば受講姿勢も受け身でなくなるし、教えるための勉強をすることで理解も進む。」ということです。
そこで採用したのがインストラクター制度です。
(2) 襲いかかる抵抗勢力
各支店毎に毎年1人ずつ、係長クラスをインストラクターに任命し、彼らにまず受講させ、他の営業マンに広げていこうというものです。
当然、インストラクターに任命されると仕事が増えます。
研修を受講しなければならないし、支店で教えなければならないからです。
しかも、だからといって目標数字が下がるわけではありませんし、多額の手当てがつくわけでもありません。
現場からの反発も並みではありませんでしたが、そこは専務命令という伝家の宝刀を使っておさめました。
しかしだからといって、彼らが感情的に納得したわけではありません。
ここからが正念場です。 後ろ向きな気持ちで研修を受講しても効果は出ませんし、現場での指導もしようとはしません。
そこで、毎回の研修のたびに、一人ずつ全員と対話を行いました。
今回のインストラクター制度の趣旨を正しく理解してもらい、これに取り組むことが営業の立場を強くし、仕事そのものの充実感が味わえることを。
対話は、私一人で行いましたので大変でした。
研修に向かう電車の中で、会場に着いてから研修が始まるまでの間、また朝食後や昼休み、研修終了後の夜や帰りの電車の中でなど、あらゆる機会を見つけては一人一人と対話を行いました。
全員に趣旨を理解してもらえたかどうかは、残念ながら分かりませんが、多くのメンバーが意気に感じ、これまでの成果につながっていると自負しております。
最近では研修も定着してきたため、この対話はやっていません。
これも、最初の4年間、対話をやり続けた成果だと思っています。
尚、研修内容も最初は手探り状態でした。