職能資格制度の功罪ーこれからの人事評価制度ー

人事評価制度の代表的な仕組みが職能資格制度ですね。

 

大企業ではほとんどの会社でこの制度を使っています。

 

なので、中小企業も多くの企業がこれに倣っています。

 

でも、本当にこの制度で良いんでしょうか?

 

 

評価の仕組みは、「業績評価(考課)」と「情意評価(考課)・能力評価(考課)」の大きな二つです。

 

「情意」というのは、積極性・明るさ・誠実さなどのどちらかというと態度面のことを指します。

 

「能力」というのは、企画力・提案力・コミュニケーン力などのどちらかというと技術面のことを指します。

 

 

最近は、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」に代えて「コンピテンシー(優秀な社員の行動特性)」を用いる企業も増えてきました。

 

極論を言えばいずれも大して変わりません。

 

重要なのは、それで何をどのように評価するかなんです。

 

そこで、「コンピテンシー(優秀な社員の行動特性)」を用いている企業は「情意・能力」の箇所を「コンピテンシー(優秀な社員の行動特性)」に置き換えて読んでいただけると意味が通じると思います。

 

 

職能資格制度では、「業績評価(考課)」を給与や賞与、インセンティブに反映させて、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」を昇進昇格に使用することが多いです。

 

それで問題になるのが、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」の目標設定と評価の仕方です。

 

そもそも目標設定が上手くできるように作られていません。

 

なので、評価しようにも評価者と被評価者のいずれにも不満が残ります。

 

 

つまり、まず職能資格が決まっています。

 

一般社員、管理職、経営層など役職に応じた役割責任を表にして整理しています。

 

もっと細かくすると、一般社員を一般社員と主任、管理職を係長、課長、部長、経営層を本部長、執行役員などに分けます。

 

もっともっと細かくすると、各階層の中に初級・中級・上級などと入れている会社もあります。

 

 

そこで、その中身を見てみると、役職が上に上がるほど求められる役割や責任が重くなるように記述されています。

 

しかし、その文言がおかしいんです。

 

やることが大して変わらずに、「ある程度~」「概ね~」「かなり~」「ほぼ~」「完全に~」など、質や量の高低・多寡を副詞で表現していたりします。

 

しかも、職種が異なるにもかかわらず、同じ職能資格表を用いている会社まである始末です。

 

さらには、この職能資格表に基づいて、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」の各項目ごとに求められる「情意」や「能力」が複数項目にわたって記述されていたりします。

 

 

この状態で被評価者は何を目標にすればよいのでしょうか?

 

もちろん、記述されている「情意」や「能力」を目標にすれば良いんです。

 

でも、表現は抽象的であり、職種ごとに分かれていなかったりします。

 

なので、評価期間中にどのような行動をとれば良いのか、もっと言えばどのような成果を出せば良いのかが不明確です。

 

 

この状態で、評価者と被評価者は評価時期を迎えます。

 

期中に評価者は大した指導もせず(できず)に被評価者の評価をしないといけません。

 

まず、被評価者自身に自己評価ができません。

 

そして、評価者も被評価者の評価できません。

 

なぜなら、何をどのようにすればよいのかという目標設定があいまいなまま評価期間に入ってしまったからです。

 

 

そこでどうすれば良いのかというと、記述されている「情意」や「能力」をもとに、被評価者の業務であれば「何を」「どのレベルまで」やることがそれに該当するのかという「行動目標の自己設定」をさせます。

 

被評価者が設定して評価者と統合して、具体的な目標にすれば期中の指導もできますし、評価もしやすくなります。

 

でも実はこれでもまだ問題があるんです。

 

これは制度の根本的な問題です。

 

 

どういうことかというと、

 

職能資格制度では、「業績評価(考課)」を給与や賞与、インセンティブに反映させて、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」を昇進昇格に使用することが多いです。

 

と申し上げました。

 

それでは、評価者は「業績評価(考課)」と「情意評価(考課)・能力評価(考課)」のどちらに重きを置いて部下指導を行うでしょうか?

 

 

評価者に求められているのは、「業績」です。

 

すると、「業績」を上げるための指導が常になされます。

 

つまり、「情意・能力」はほとんど見てないことが多いです。

 

なので、この状態で「行動目標の自己設定」を行っても、まだ不十分だということになります。

 

しかも、評価者も被評価者も「業績」を達成するために「どこに重点を置いて、何をするのか」に注力します。

 

 

「業績」を「(定量的な)ビジョン」とすると、「戦略」と「(行動)目標」に相当します。

 

すると、この「戦略」と「(行動)目標」が常に意識され、「情意・能力」に基づいて「行動目標の自己設定」を行っても、それは評価時期にしか意識されないことになります。

 

では、どうすれば良いのか?

 

簡単です。

 

 

「業績」を上げるために必要な「情意・能力」を設定すれば良いのです。

 

言い換えれば、「業績」に基づいて作成される「戦略」と「(行動)目標」を「情意・能力」とその「情意・能力」に基づいて作成される「行動目標の自己設定」とを同じものにすればよいということです。

 

図示すると下記のようになります。

 

 

「戦略」=「情意・能力」

 

「(行動)目標」=「行動目標の自己設定」

 

 

しかも、「情意評価(考課)・能力評価(考課)」を単独では昇進昇格に使用しないということです。

 

設定方法を申し上げると、

 

達成すべき「業績」がまずあり、その「業績」を達成するために必要な「情意・能力」があり、その「情意・能力」を身に付けたかどうかを判断するための「行動目標の自己設定」があるということです。

 

すると、被評価者は期初に「行動目標の自己設定」を行うので、そこに記述した行動をとり続けると「情意・能力」が身に付き、「業績」が達成するという理屈になります。

 

 

そのうえで、「業績」と「情意・能力」をそれぞれの尺度で評価し、合計点を出して評価点とします。

 

この評価点をもとにして、昇進昇格も考えれば筋が通ります。

 

ただし、昇格はさせても昇進は単純には決められないので、そこは別尺度を用意する必要があります。

 

しかし、いわゆる通常の人事評価制度ですべての評価をする必要はありません。

 

昇進基準は別に定めれば良いだけのことです。

 

 

でも、「業績」を上げるために求められる「情意・能力」はどうやって決めるのでしょうか?

 

しかも、そこに手間がかかるとまたいい加減な目標設定になってしまいかねません。

 

そこで、一般に必要とされる「情意・能力」はマスター化してそこから選択できるようにしておきます。

 

また、職種・職位ごとに会社(本部もしくは部)がマスターから選択(決めて)しまっても良いでしょう。

 

重要なのは、「行動目標の自己設定」だからです。

 

 

すると、「業績」を上げるために求められる「情意・能力」まで会社が決めるので、会社の「理念」や「ビジョン・戦略・(行動)目標」が部門や個人まで浸透しやすくなります。

 

いかがでしょうか?

 

私は個人的にはこのような形で人事評価制度を構築し・運用されることをお勧めしています。

 

続きは下記をご覧ください。

↓  ↓  ↓

職能資格制度の本来の活用方法ーこれまでの人事評価制度ー

 

 

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